昭和63酒造年度（注１）に醸造した鑑評会出品用の大吟醸酒を35年間低温で貯蔵したお酒（詳細後記）です。
ドライフルーツの甘やかさと、アーモンドやナッツ類の香ばしい香りが渾然一体となって立ち上がります。シルキーで滑らかな口当たりと、緻密で複雑な旨味、フワッと鼻孔に残る長い余韻まで、完璧な仕上がりです。
蔵内冷蔵庫にて「35年間」静かに瓶貯蔵された味わいは、まさしく35年の年月に相応しい、非常に上品ながら深い熟成感をお楽しみいただけます。
常温でじっくり、またぬるめのお燗もお薦めです。是非、ブランデーグラスなどで、ゆっくりと時間の経過とともに変化する味わいをお楽しみください。
ラベルは、白地（砡）の瓶に、明治時代の島田家家屋の様子がよくわかる、貴重な資料版画をモチーフに一本一本直接ボトルプリントを施した、特別仕様です。

◆◆　350周年を祝うのに相応しい特別な味わい。　　50本限定　◆◆

このお酒を醸造した杜氏の力石武司は、太洋酒造（新潟）、世界鷹酒造（埼玉）の杜氏を務めた後に、昭和46年から第一酒造の杜氏を務めた越後杜氏（出身は寺泊）です。
平成20年に杜氏引退するまで当社の杜氏を務め、開華が「関東の三銘酒」と言われる銘醸蔵になった立役者です。
当初は（当時はあたりまえの）冬季のみの杜氏でしたが、昭和50年代からは、当時としては全国でも珍しい、年間蔵に在中し、出荷管理までを務める社員杜氏となりました。

・全国新酒鑑評会金賞は、昭和60年及び平成になってからは10回の金賞
・関東信越国税局酒類鑑評会は、昭和57年から平成20年まで毎年優秀賞
・酒造部門で初の「とちぎマイスター」　等々

栃木県が進めた下野杜氏育成制度では初年度から講師を務め、初回認証審査会から審査員を務め、下野杜氏の誕生に大きく貢献しました。
第一酒造の杜氏就任直後（昭和40年代後半）には、純米酒「みがき竹皮」を上市し、級別制度による商品ラインナップがあたりまえの時代に初めて純米酒を発売。地元中心であった当社の東京進出の先鞭となりました。平成4年には、純米吟醸酒「風の一輪」を上市し、日本名門酒会新作展の商品群のなかでも高い評価を受けました。平成10年には、上槽（じょうそう）が２月４日と決められている「立春朝搾り」を醸造し、その酒質が高い評価を受けました。この時の酒質は、その後の立春朝搾りの基準にもなり、同商品が大きく成長（現在、全国43酒蔵で合計約28万本）する原動力となりました。

今回のお酒である鑑評会出品用の大吟醸酒ですが、鑑評会に実際に出すお酒は、袋取り、槽掛け、薮田式上槽機の異なる方法で搾り、数量が僅かな袋取り、槽掛けについては、搾りあがる順番ごとに斗瓶に取り、一升瓶で保存します。一部のお酒には炭を貼り付けして（入れて）いました。それらのなかから、実際に鑑評会（全国新酒鑑評会だけでなく、関東信越国税局、栃木県など複数あり）に出品するタイミングでベストなものを選び、出品です。
せっかく鑑評会用に特別に醸造、上槽したのだからと、僅かに残った一升瓶を、そのまま低温で貯蔵。当初（昭和～平成前半）は、醸造時の酒質をなるべく変化させないように、－５℃で貯蔵していました。最近（平成後半以降）は、熟成による変化を期待して５℃で貯蔵しています。35年古酒は、貯蔵前半は－５℃、貯蔵後半は５℃での貯蔵です。
必ずしも全ての年で貯蔵されたわけではなく、10年～20年熟成後に販売された貯蔵酒もありましたが、たまたま保存されていた35年貯蔵酒が一升瓶で20本だけあり、720ml瓶で50本だけ商品化できました。
前述のとおり一部の一升瓶には炭が入っていましたので、フィルター除去しましたが、僅かに通過した黒い炭の一部が残っているかもしれません。
昭和63酒造年度の鑑評会出品酒（大吟醸）ですが、当時の関東信越国税局管内の酒質傾向もあり、現代の高香気生産性酵母が無いなか、突きハゼ型の麹を作り、華やかな香りときれいな酒質の吟醸酒造りを行なっていました。最近の出品酒と比べると糖分、エキス分は少なく、辛口のお酒として35年前に誕生しています。

（注１） 酒造年度：日本酒造りにおける醸造年度のことで、 7月1日～翌年6月30日までを1年とします。英語でBrewery YearということからBYと略されます。昭和63酒造年度（昭和63ＢＹ）は昭和63年7月1日～平成元年6月30日